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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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大らかと言うべきか、迂闊と言うべきか。
水飴は甘いから馬も好きですと呑気に言う団蔵に、三木ヱ門はちょいと唇を尖らせた。
「大抵の動物は甘いものが好きだな。ところで、善法寺先輩を見なかったか」
一応尋ねてみるが、予想通り団蔵は首を振った。
「放課後はずっと教室で作文を書いていたので」
「ふうん……ん? そう言えば、お前の他はみんな時間内に仕上がったのか?」
虎若、三治郎、金吾、しんべヱ、喜三太、乱太郎、声だけだが伊助、それにきり丸、放課後にあちこちで見かけた一年は組の面々は、果たして作文は得意だろうか。
団蔵は再度、首を振った。
「庄左ヱ門ときり丸以外は書き終わりませんでした」
「庄左ヱ門は分かるけど、きり丸も手が早いのか」
「反古紙にしたら勿体ないからって、書き直しをしないで一気に仕上げちゃうんです」
だからみんな授業の後もみんな教室に居残りでうんうん唸ってました。
それでも委員会の当番や用事がある者はできる限り急いで書き上げ次々に教室を出て行ったが、何の予定も無かった団蔵は目一杯時間をかけて呻吟していたので、結びの句にこぎつけたのは一番最後だった。
「ひとりで延々と作文を書いてたら、煮詰まるだろう」
山のような書類を清書していた吉野は、つい生徒に八つ当たりするほどカリカリしていた。それを思い出して三木ヱ門が言うと、団蔵はニッと笑った。
「庄左ヱ門と伊助も教室で雑巾を縫ってたから、適当に喋ったり行き詰まったらアドバイスを貰ったりして、のんびりやってました」
「ちょっと待て」
五年生の三郎が食草園で昼寝をしていたくらいだから、学級委員長の庄左ヱ門は今日は委員会活動がないのだろう。だからクラスの仕事として、は組が使う雑巾を縫っていた。それはいい。それは納得できる。
だが、火薬委員の伊助は、焔硝蔵で兵助と在庫を調べていたのではないのか?
兵助が焔硝蔵の中へ向かって呼び掛けて返事をした遠い声は、それでは誰のもので――兵助はなぜ、そこにいない伊助の名前をわざわざ出した? いやそれ以前に、在庫確認の最中だと言ったのも、つくりごとか?

どうして嘘をついた?

先輩がこういう表情をした時に混ぜ返したらものすごく不機嫌になる、と身に染みているらしい。
三木ヱ門の鋭い制止に、じゃあ向こうで待ってます、というボケを団蔵はしなかった。


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