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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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「金時ニンジンの親戚」
「嘘だあ」
「もし手に入ったら馬に食べさせてみろよ。ひと齧りで百里を苦もなく駆けるぞ」
見え見えのはぐらかしをする三木ヱ門に、馬はニンジンだけが好物じゃないですと団蔵が口を尖らせる。ついでに鼻をこすろうとして、上げた右手に墨がついているのを見ると、袖を引っ張ってそれで鼻先を拭いた。
「神埼先輩たちと何かあったんですか?」
廊下の真ん中に空いた穴と渋い顔をした三木ヱ門を順繰りに見て屈託なく尋ねる。もしや猛烈に仲の悪い四年生と三年生に、のっぴきならないいざこざが起きたのかと憂えている顔ではない。ぱっと見は心配顔だが目をきらきらさせて――こういう事態を面白がるのは一年は組の特質か?
「……いや。塹壕掘りをしていた七松先輩が床下から廊下をぶち抜いたところに、たまたま僕と左門が居合わせただけだ」
「そうですか」
だいぶ端折った説明に、団蔵は簡単に納得した。それじゃ屋根を走ってたのは七松先輩かと一人合点して頷いている。
訂正すれば薮蛇になる予感がひしひしとしたのであえて聞かぬふりをして、三木ヱ門はさり気なく別の話題を出した。
「さっき、清八さんが届け物に来ていたぞ。作文を書き終わったのなら会って来たらどうだ?」
「あれっ。そうなんですか」
それを聞いてひょいと伸び上がった団蔵は、その反動で背中を丸めながら首をかしげた。
「なんで僕が作文を書いてたって知ってらっしゃるんです?」
「きり丸が言ってた」
のを、いま思い出した。授業中に終わらなかった作文の清書をしてるんです、あいつ。
しかし団蔵が持っているのは「いろは練習」の書き取りドリルだ。三木ヱ門の視線に気づいた団蔵が恥ずかしそうにそれを身体の後ろへ隠す。
「教室で作文を仕上げて、ついだから、字の練習もして来たんです」
「良いことだ。しかし、教室は寒いだろう」
もともと火鉢や火桶なぞ置いてもいないが、ひと気のない放課後の教室にひとりぽつんといるのはなお寒々しい。自室も寒いに変わりはなくても、ぶるっと来たら上着や上掛けがすぐそこにあるだろうに。
三木ヱ門がそう言うと、団蔵はますます決まり悪そうに首を縮めた。



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