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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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軒先から飛び出したそれは空中で辛うじて一回転すると、地面に這いつくばるようにしながらもどうにか足から着地した。
「所により、竹谷先輩」
自分が落ちて来た屋根の上に視線を据えたままぜいぜいと肩で息をする八左ヱ門を指差しかけて、その手を引っ込め、左門が言う。
「いや……鉢屋先輩かも」
髪を乱し埃にまみれて汗びっしょりなのは見て取れるが、見た目だけではどちらか判断できないので、三木ヱ門はもうひとつの可能性を口にする。
その会話が聞こえたのか(暫定で)八左ヱ門はちらと廊下に目をやり、二人の姿を認めると、
「頭を出すな!」
一声叫び後転跳びで一息にその場を飛び退く。
とりあえず言われた通りに軒下から首を引っ込めて壁際に寄り、何が起きているのかと目を丸くした二人は、一瞬前まで八左ヱ門が伏していたまさにその場所へ石つぶてが続けざまに降るのを見た。
同時に、頭の上で屋根板を踏んで走る足音がした。
「曲者ですか!」
「違うっ」
飛び込んだ植え込みの根元で亀のように身を縮めている八左ヱ門は大声で問う左門に即答し、素早く左右に視線を走らせて、絶望的な表情をした。植え込みの後ろに伏せていれば攻撃は避けられるが、屋根の上の誰かには次の動きが丸見えだし、ここから動こうにも身を隠せる遮蔽物が近くにない。
と、屋根を仰いだ八左ヱ門が叫んだ。
「それも忍術です!」
屋根の上で誰かが叫び返すが、大き過ぎてひび割れた声は喋っている言葉が聞き取れない。そして植え込みの緑葉を散らして、再び石が突き刺さる。
誰かに石もて追われる状況になった理由はさっぱり分からないが、八左ヱ門が大ピンチなのは確かだ。
「竹谷先輩――」
両手を口の横に添え声を低くして呼びかけた三木ヱ門は、八左ヱ門がこちらを向いたのを確かめると、身振り手振りで「床下に抜け穴がある」と知らせた。小平太がここまで掘り進んできたと言うことは、どこか他の場所に通じているはずだ。
八左ヱ門はそれを正確に読み取った。
懐から掴み出したものをサッと後ろへ投げると、自分は反対方向へ飛び出し、廊下の下へ頭から滑り込んだ。
誰かは八左ヱ門が放ったねずみに一瞬気を取られたらしい。畜生っ、と頭の上で毒づく声が聞こえ、荒っぽい足音はあっという間に反対側の屋根の方へと遠ざかる。
その音が消えてから一呼吸おいて、三木ヱ門は目をぱちくりさせる左門と顔を見合わせ、呆気に取られたまま呟いた。
「……何だったんだ、今の」



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