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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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要するに! と馬鹿でかい声を張り上げて二人のやり取りに割り込む。
「善法寺先輩がこっそり作っていた薬は効果抜群でおまけに持続性のある体力増強剤で、それゆえに七松先輩はただ一度口にしただけで一ヶ月もずっと好調好調絶好調なのですね」
「ふうん?」
きっぱり断じる左門に、少し気を呑まれたふうに小平太が鼻を鳴らす。それから右手を上げて閉じたり開いたりし、その何度目かにぎゅっと力を込めて拳を握ると、不意にがっくり肩を落とした。
「なんだ、それじゃ調子がいいのは鍛錬の効果じゃなかったんだ。なあんだ……」
見る間にしょんぼりとしおれてしまう。だけではなく、膝を折って廊下にへたり込んでしまい、塩をかけられて逃げ出すナメクジさながらの体で掘り抜いた穴までずるずると膝行して、転げ落ちるように床下へ姿を消した。
「薬で得た力は所詮、自分の実力じゃないってことだな。……間違ってないけど、もう少し気を使って物を言えよ」
恐る恐る穴の底を覗いた三木ヱ門が左門を肘で小突く。鼻の下をにゅうと伸ばす奇妙な表情で遺憾の意を表していた左門は、たちまち眉を吊り上げた。
「その言葉は先輩にお返しします。作兵衛は盗みなど――」
「しないよ。分かってるってば。さっき謝っただろう」
「誰が聞いているか分からないのです。迂闊にそんなことを口に出すのは止して下さい。そもそも、なぜそんな事を考えたんです」
眦をきりりと決し、力の入った表情で左門が問い質す。
その場しのぎや言い逃れが通じる様子ではない。のらりくらり追及をかわそうとしたら、のらりの「の」を言う前に大喝を食らいそうだ。
「……実は作兵衛の落とし物を拾ったんだが、それが不相応な代物だったので、不思議に思ってな」
どこまで話していいものか、言葉を選びながらぼそぼそと言い、飛び出した小平太に驚いて手甲の下へ押し込んでいた蟹鐶をもう一度取り出して左門に見せる。
「金箔じゃなくて本物の金ですね」
しっとりした光を見てすぐに左門が言う。なるほど不相応だと、尖らせていた目をやや和らげ、代わりに口元の線を厳しくする。
「ついでに聞くけど、作兵衛がこういう物を持っていた覚えは?」
「ありません。でも、盗ってません」
分かってるってば。


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