番号の重複に今頃気づいて修正したら「短期集中」と謳いながら100話目に達していた 何を言っているか(以下略 。
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喜八郎ときたら思い付きで喋るんだから、たまにびっくりさせられる。
いつもの潮江先輩なら身形はきちんとしておられるのに、髪も上げたままだったし、濃く塗った白粉を落とすだけで手一杯だったというだけの話だろう。きっと。
頭をひと振りして三年生の部屋の方へ歩き出しながら、三木ヱ門は指折り考えた。
用具の「予算をスッた」という噂は真実。
生物の「鳥の餌代」は預かった猿のケア費用の建前。
図書の「同じ本を五十冊購入」は学園長命令で仕方なく。
作法の「鳥籠」は鷹狩りの作法の勉強に必要だから。
体育の「領収書なし」は紛失のため。
保健の「雀用薬餌代」は、どうやら委員長だけが実態を知りながら口を噤んでいる。
火薬と学級委員長は――なにか隠しているのは確かだが、確証は未だ無し。
留三郎に約束させられた"鼻薬"の件があるから、いずれ伊作とは会わなければならないが、どうせなら最後の二つについても見当をつけておきたい。実情を掴んでおけば会計監査を早く済ませられるし、そのぶん決算作業と予算会議に時間を割ける。
一日二日の徹夜はなんとかなるけれど、三日四日となると一年生たちは魂が抜けるし左門は目を開けたままうとうとするし、五日六日に入ると帳簿に書かれた数字や算盤玉が枷を外れて自由勝手に踊りだす。委員長は徹夜が続いてもあまり変化しないが、気力と体力が保たず手が止まりがちになる後輩たちに機嫌が悪くなり、三木ヱ門は委員長と下級生の間に挟まれて身の置きどころに困る。
どうしても、と休憩の必要を訴えれば聞いてはくれるが――氷が張ったこの時期の池で寝たら、そのまま目を覚ませなくなりそうだ。
二重の意味でぞくっとして、肌が粟立った。
「あーあ。医務室はあったかかったな」
腕をさすりながら呟く。
作兵衛が三木ヱ門を見て再び遁走したということは、留三郎はまだ医務室で乱太郎と左近に捕まっているのだろう。当人は大丈夫だと言い張っていたが、鎖骨の打ち身はずいぶん酷いように見えたから、きっちり手当てを終えるまで保健委員たちは放してくれないに違いない。
「……善法寺先輩も加わっていたりして」
そしてまた痛みが引く代わりに全身の骨が痒くなる薬を調合していたりして。
想像してくすっとしたのと同時に、廊下の角を曲がって来た誰かと衝突した。