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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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長屋の廊下からよれよれの声がした。
見上げると、心無しかボロくなった滝夜叉丸が紙の束を手に歩いて来たところだった。すぐ後ろには喜八郎もいて、いつもの踏鋤ではなく、やはり何冊もの冊子を抱えている。
「やほー。今、暇?」
三木ヱ門と目が合った喜八郎は、ふさがった両手の代わりに右足をひょいと上げて挨拶のようなものをした。
「はいはい、やほー。暇じゃない」
「なんだ。運ぶの手伝ってもらおうと思ったのに」
「それ、何? テストの答案か?」
「い組の宿題、と言うか補習用のプリントと問題集だ」
庭先から廊下に上った三木ヱ門が二人の持っているものを覗き込もうとすると、その目から隠すようにプリントを持ち直して、滝夜叉丸が無愛想に言った。その姿に何か違和感があると思ったら、いつもはまるであふれ出る自信を誇示するようにくるんと跳ね上がっている前髪が、すべて顔の前にしおしおと下がっている。
……まさか、本当に泳いだのかな。この寒いのに。
どことなく湿っぽい髪の毛の先に目を留めた三木ヱ門が思わず眉をひそめると、それをどう受け取ったのか、滝夜叉丸は憤然として顎を上げた。
「言っておくけどな! これは今日の授業が予定通り進まなかった分を各自で自習するためにクラス全員に配るもので、決して私だけが特に追加されたものではないぞ。教科も実技も成績は学年で一番、実戦では上級生にも引けをとらないばかりでなく歌舞音曲や茶の湯の芸術にも秀で忍術学園期待の星との呼び声高く既に各地の忍者隊がスカウトを派遣して来るほどの」
「以下省略」
ぱきっとグダグダの腰を折った喜八郎は、こんなに課題が出て参っちゃうよねーと、ろ組の三木ヱ門に同意を求める。
同級生しかいない場で身上披露をしても甲斐がないことは承知しているのだろう、滝夜叉丸は口上を遮られたことには何も言わず、キッと喜八郎を睨んでプリントを突き付けた。
「お前が落とし穴に目印を付け忘れて、先生がそれを踏み抜いて授業に遅刻してしまわれたせいだろうが!」
「だから言ってるじゃない。アナンダ2号の手前にはちゃんと石を並べておいたってば。誰かが動かしちゃったなら、それは僕のせいじゃない」
「2号……、アナンダ1号はどこに掘った?」
「三叉路の真ん中」
眉根を寄せたまま尋ねる三木ヱ門にあっさりと答えて、あれはここ数日で一番の出来だったと喜八郎が誇らしげな顔をする。
「……学園を訪ねて来られた北石先生が、1号に落ちて出られなくなっていたぞ」
「おやまあ」



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