用具委員の一年生たちは、村人に難癖をつけられて作兵衛が落ち込んでいるんじゃないかと心配していた。風邪をひかないように医務室で生姜湯は貰ったけど、罠にかからなかったと言われた分の魚を捕まえようとして頭までびしょ濡れになっちゃったし、とも。
ひとりで魚を取ろうとした――と喜三太は言っていた。
生き物を捕まえようとするなら数人がかりのほうが勿論効率がいい。それなのに、一年生を冷たい水の中へ入れず、ひとりでバシャバシャと。
まだ身体が小さく体力のない後輩をかばった。それも理由のひとつだろう。
今ひとつの理由は。
石火矢格納庫の前を通り過ぎ、忍たま長屋の方角へ走りながら、三木ヱ門は自分の右腕をちらりと見た。
会計委員会の中で学年は六年生の文次郎に次いで二番目だから、多忙な委員長を補佐する役目は必然的に三木ヱ門に回って来る。山ほどの叱責や注意を浴びながら必死になって仕事こなすうちに、今では重要な仕事を任されたり、委員長不在の場合は代理を務めたりするようにもなった。
委員長の右腕と見なしてくれる人もいる。
――けど、今でも必死だ。役に立ちたい、お荷物になりたくない、そんな殊勝な思いばかりでもない。
六年生に、委員長に、たとえ学年は下でも自分は必要な存在だと認めさせたいと、いつでも思っている。
だからきり丸がさっき「潮江先輩が食満先輩に焼き餅を焼いた」と言った時、まさかそんなと否定しながら、ちょっぴり嬉しいと思ってしまった。
三年生の作兵衛は用具委員会の中で二番目だ。
同級生の左門いわく、責任感が強くて真面目なやつだ。
村人の前に魚を積み上げることができれば言い掛かりの種をひとつ消せる。手間賃を巡る押し問答に苦慮している用具委員長の助けになる。自分がそれをやらなくちゃ、と一心に思い詰めたのだろう。
「……あ、そうか」
忍たま長屋へたどり着いて足を止めたのと同時に、思い当たった。
委員長のお役に立つぞと気張っていたのに、その委員長に、あとは自分が何とかするからと鼻垂れの一年ボーズたちと一緒に先に帰されてしまったのだ。
これはヘコむ。
そう指示された時の作兵衛の心境を想像して、三木ヱ門はつい呟いた。
「食満先輩って意外と分かってない……」
「誰が何を?」