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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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きり丸は肩をすくめ、落とし穴を覗き込んで大声を出した。
「優秀なくの一なんでしょー? ひとりで上がって来られないんですかー、北石せんせー?」
「私用で来てるのに、投げ縄や縄梯子なんて持ち歩いてるわけないでしょ! 大体、この穴、深過ぎるのよ!」
きり丸の後ろから三木ヱ門が覗いてみると、穴の底で腰に両手を当てて仁王立ちした北石照代の怒り顔が、小さく見えた。
今日の喜八郎はまた随分と気合を入れたものだ。そう言えば入門票に北石先生の名前があったっけ。私用って、何の御用だ?
「誰か縄を持っていないか?」
「そうおっしゃる先生は、持ってらっしゃらないんですか?」
「わしもお見送りをして来たばかりだからなあ」
「清八さん、荷造り用の縄とか持ってたりしませんか」
「すいません。異界妖号の所に置いて来ちまいました」
「何でもいいから早くしてー!」
お互いに顔を見合わせて黙ってしまった5人の鼓膜をつんざくように、北石のキンキンした声が響く。思わず耳を塞ぎ、三叉路の一方に目をやって、三木ヱ門が仕方なく提案した。
「ひとっ走り、用具倉庫で縄を借りて来ます。それが一番早そうだし」
「おお。田村、行ってくれるか?」
「はい。……何を知らん顔している、お前も来い」
「ぎゃー」
さり気なくその場から離れようとしていたきり丸は、三木ヱ門にぐいと髪の尻尾を引っ張られて潰れた悲鳴を上げた。
部外者の清八は仕事に戻るためその場を離れ、書物を運ぶ途中だった雷蔵は庵へ向かい、木下をあとに残して倉庫へ急ぐ。タダ働きに文句たらたらのきり丸はしきりと横道へ逸れたがり、そのたびに三木ヱ門に襟首を掴んで引き戻され、憤懣やるかたなしといった感じに口を尖らせた。
「あーヤブヘビ。あー体に悪い。あー時間が勿体ない」
「さっき僕をかまう暇はあるって言ったろ。その時間をこれに充てろ。よく知らないけど、一年生は北石先生と親しいんだろ? お前が縄を借りて来ると言い出せよ。気の利かない」
会計委員会顧問の安藤の知り合いの娘さんで優秀なくの一、という他に三木ヱ門は北石のことを知らない。何の気なしにそう言うと、きり丸は嫌そうな顔をして笑った。
「北石先生、忍術は結構使うし、いい性格でいらっしゃいますよ」
「へえ。気立てが良いのか」
「違います。いい性格、です」




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