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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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医務室で孫兵が裏山にいる八左ヱ門のことを言った時、左門が猿を預けたのは木下だと思い当たったのを、今やっと思い出した。

「やかましい」
ごちん、と骨が噛み合う硬い音が頭の中にこだました瞬間、三木ヱ門は自分の視界がぶわっと滲んだのを見た。
受けた場所は同じ頭の天辺だが、木下の拳骨は文次郎の五十倍は痛い。
痛いと反射的に涙が出るんだなあと妙な感心をしながら、雷蔵に確認した。
「正門の方へ走って行く竹谷先輩をお見かけになったのは、放課後すぐでしたよね」
「うん、そうだけど……今日は君の泣き顔に縁がある日だなあ」
「……不可抗力です。あの、学者先生は講義の後すぐにお帰りになったのですか?」
「いや。授業の終了時間より早く講義が終わって、その後は終礼まで学園長と庵で話をしておられた」
腕を組み、窺うような顔つきで三木ヱ門を見つつ木下が答える。
「木下先生は、その間は?」
「庵の外で待っていた」
「三年の、会計委員の神崎左門が、ご面倒をお掛けしませんでしたか」
慎重に三木ヱ門が尋ねる。
木下の目が動いた。
「左門には会ったが、拾い物を預かっただけで特に面倒はなかったぞ」
「そうですか。……それなら良かった」
「えっ、いいんですか?」
木下のぶっきらぼうな言葉にほっと息をつく三木ヱ門に、神崎先輩がまたどっかで迷子になってるってことじゃないですか、ときり丸が呆れ顔をする。雷蔵はきょとんとして目を瞬き、清八は受取り状を丁寧に折り畳んで懐に収めている。

事の順番は、おそらくこうだ。

無名の学者だが学園長の旧友である特別講師を、講義が終わったらはいさようならとひとりで帰らせる訳にはいくまい。
ならば生徒か教師が見送りにつくはずで、講義を聞いた五年生の担任である木下が送ることになったのだろう、八文字名前の講師と並んで出門票の末に書かれていた四文字は「木下鉄丸」の署名だったのだ。
――このあたりは出門票と入門票を見比べた時に気付くべきだった、と三木ヱ門はひそかに悔しがった。
それはさておき。
庵で話し込む講師を木下が待つ間に終礼の鐘が鳴り、放課後になって活動を始めようとした生物委員の前で、飼育小屋から猿が脱走した。
頼りになる生物委員会委員長代理と言えど、浮き足立つ下級生たちを宥めて捜索の手筈を指示するのに少々の時間は要っただろう。が、ともかくそれを済ませた八左ヱ門は、大急ぎで門へ向かって駆け出した。
雷蔵が見かけたのはその姿だ。
孫兵いわく「木下先生に急いで報告に走った」八左ヱ門が、学園内を探さず真っ先に正門を目指したのは、木下が講師に同道していくことを知っていたからだ。
それを知らない孫兵は医務室で予想を超える緊急事態を知って、「先生の居場所が分からないのに」と真っ青になった。
ひどくうろたえる様を三木ヱ門と留三郎と乱太郎にばっちり見られた孫兵が、ほんの一言を伝えそびれた八左ヱ門の伝達ミスを許してくれるかどうかは、三木ヱ門の関知するところではない。




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