岩波書店「日本古典文学大系 梁塵秘抄・閑吟集・狂言歌謡」から抜書き
「冠者は妻設けに来んけるは、構へて二夜は寝にけるは、三夜といふ夜の夜半ばかりのあか月に、袴取りして逃げにけるは、」
露顕(ところあらわし=披露宴)の前夜に逃げ出す冠者(成人したばかりの若い男)の様子を写実的に描いたもの
・妻設け 聟取り婚 妻問婚と同様?
・来んけるは 「来にけるは」間接経験
・構へて 心に掛けて。底本「かまつ(川)て」(誤写類型Ⅷ型)
・夜の 底本右傍に「無之」
・袴取り 股立ちを取る/袴の裾を腰の両脇のスペースに突っ込んで、腰紐の下を通し上へ引き抜いて留める。機動性確保のために果し合いや斬り込みの前によくやる。脱ぎ捨てた袴を拾った訳ではない。
・逃げにけるには 底本「か(可)けよけるは」(誤写類型Ⅰ・Ⅰ型)