予算の話なら怪しい鳥の子玉の件で会計委員に分があるはずなのに、深入りすれば逆にやり込められそうな予感がして、三木ヱ門は早々に話を変えた。
「専用の火薬壷、立花先輩なら出世払いでお持ちになりそうですけど、勧めてみてはいかがです」
「それが、そうでもないんだ。立花先輩はここから火薬を持ち出すのを全く躊躇なさらないから」
「……さすが」
「でも最近はちょっと使用量が減ってるな。火器の研究よりも他の事で忙しいらしいよ」
「他の事。って、何ですか?」
「そこまでは知らない。色々あるんだろう、六年生ともなると」
首を振った兵助が、ちょっと探るような表情をして顎を引く。
「気になるのか?」
本当に気になっているものは、何だ?
三木ヱ門はさっきの兵助のように、ぱちぱちと何度か瞬きした。
「色々あるんです。四年生ともなると」
鳥籠を買った作法委員会委員長が急に忙しくなった理由も、作った鳥の子玉を全滅させたと主張する火薬委員会も、ここへ向かった筈なのに姿の見えない伊作と一平も、気になる。
気になるが、兵助の台詞をなぞってそらとぼける。
「……あ、そ」
気の抜けた返事をした兵助はフイと手元の在庫表に目を落とし、思い出したようにそれを何枚かめくって、「それはそうと」と口調を変えた。
「時間がある時でいいんだが、ひとつ頼まれてくれないか」