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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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その一瞬の間に、兵助の方から話しかけてきた。
「もしかして、火縄銃用の火薬の申請?」
やれやれと苦笑交じりに言って、ちらっと焔硝蔵の中へ目をやる。
「はい。今すぐではなくていいんですが、都合していただけますか」
伊作たちのことは黙っていようと即座に決め、三木ヱ門は神妙な顔を作って頷いた。
来月佐竹村で照星の指導を受けられることになっていて、張り切って予習に励んだおかげで今月はいつにも増して火薬の個人使用量が多い。おかわりを言い出しづらくてコソコソしていましたという体(てい)でしおらしげに眉を下げると、兵助はあっさりと「いいよ」と答えた。
「いいんですか?」
咄嗟の方便とはいえ、少しは控えろと注意のひとつもされるかと身構えていた三木ヱ門が素っ頓狂な声を出す。片手に在庫表らしいものを掲げて兵助がニヤリとした。
「生徒が自主練習に十分使えるくらいの火薬は常に確保してある。委員会の乏しい予算からじゃなくて学園で購入してるんだ、遠慮することはないさ。でも、気が引けるのなら、専用の火薬壷をひとつ個人で買うか?」
「とんでもない! とても買えませんよ」
慌てて首を振る。自分で好きに使える火薬というのはかなり魅力的だが、火薬やその原料は輸入頼りだからとんでもなく高いのだ。
「そう? 最近は買い入れ先を選べば、結構安く買えるようになってきてるよ」
それでも小遣い銭二、三年分は軽く飛ぶけどなと、涼しい顔で兵助が言う。卒業まで買い食いも町遊びもできないけど、火器にかけては学園ナンバーワンと豪語するなら、それくらい豪儀でもいいんじゃない?
そう言われた三木ヱ門が黙って苦い顔をすると、兵助はハハッと声を立てて笑った。
「まぁ、美味いと噂の饅頭は食ってみたいし、評判の軽業は見てみたいよなぁ」
何も本気で営業にかかったわけではなく、からかってみただけらしい。
「……久々知先輩、鉢屋先輩がうつったのではありませんか」
「感染性三郎症候群。やだな、それ」
拗ねる三木ヱ門に軽口を叩いて受け流す兵助の態度は、泰然としている。
会計委員の三木ヱ門が焔硝蔵へ訪ねて来ても、さっきのタカ丸と三郎次のようなあからさまな警戒は見せないし、話の流れで簡単に予算のことを口にした。
火薬委員会には会計委員会をはばかる隠し事があるらしいのは確かなのに、さすが五年生、守りが固い。
「おーい、伊助ぇ。あとどれくらい?」
ちょっと三木ヱ門から目を離した兵助が扉の中へ向かって声を掛けると、遠い声が「もう少しでーす」と答えた。
「在庫確認ですか」
「うん。焔硝蔵の中のほうが吹きっさらしの表より寒いから、大変だよ」
甘酒代は出ないしと兵助が横目をしたので、三木ヱ門は明後日の方へ視線を逸らした。




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