理屈のような屁理屈のような、しかしこうも明朗に主張されたら「確かにそうだ」と納得してしまいそうだ。
「作法委員会でしたっけ。届け物って何ですか?」
馬の背には鞍しか載せられていないが、清八は蓋が付いた四角い籠を背負っている。何気なく三木ヱ門が尋ねると、清八はその質問を軽く退けた。
「申し訳ありません。守秘義務がありますので、お教えできないんです」
「……あ、そうですか」
笑顔できっぱり拒否されてはそう答えるしかない。しかし、言い様は爽やかなので嫌な感じはしなかった。
気を取り直し、三木ヱ門はずっと後ろの方を指さした。
「今日は活動しているかどうか分かりませんけど、それでも向こうの校舎のほうに何人かはいると思います」
いつも作法委員会が使っている部屋の場所を言い、それから、と異界妖号の足元へ目をやる。
「縦に深い穴が地面に開いていたら、その中にいることもあります。部屋に誰もいなかったら覗いてみて下さい」
「へえ? 落とし穴か何かですか」
「掘った当人はタコツボだと主張してます」
学園の庭で蛸が釣れるとはさすが忍者の学校だと妙な感心をして、清八は礼を言い、鞍には上らず異界妖号の手綱を牽いて立ち去った。
おんぶした子供を揺すり上げるように時折籠に手を添える清八と、ゆらゆらと左右に揺れる長い尻尾を見送り、前を向いた三木ヱ門はまた駈け出す。
伊作たちの行方と焔硝蔵へ向かう目的はもちろん気になるが、荷の方も気になって、走りながらついちらちらと背後を振り返る。
「あの籠、……中身は籠だったりして」
忍術学園で言う「作法」はお茶やお花のような優雅なものではなく、有職故実や兵法の研究、戦場での振る舞い方など、ひたすら退屈で無骨なものを指す。
それでも、忍者は多趣味でなければならないということで、作法委員会は巷の流行り物の情報をひと通り押さえているらしい。その内の幾つかは実践してみることもあるようで、たまに突飛なものを買い入れては会計委員長に渋い顔をさせている。
今月のそれは、驚くほど値段の高い鳥籠だった。