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. . . . . . . . . . . . ぐだぐだ雑記兼備忘録です。
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written by 大鷲ケイタ
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他言できない取引の証拠を掴んで強請りでもするんですかと尋ねたら、「それもいいな」と満更冗談でもなさそうに言って、そのあとに鼻の頭をきつく指で弾かれた。何をする訳ではないが、事のゆくたてを知っていて損はないから、情報として「貯めておく」のだそうだ。
そう言った時の留三郎は随分と人の悪い笑みを浮かべていたが。
用具の下級生の前ではあんな表情はしないだろうなと思いつつ、建物と築地塀の陰を回り込んで日向に出ると、思いがけないほどの眩しさにちょっとクラクラした。
地面をつついていたすずめの一団が、突然現れた三木ヱ門に驚いてパッと飛び立って行く。
保健委員会の薬草園と生物委員会の食草園は、学園の敷地内でも特に日当たりと水はけがいい場所に隣り合って作られている。なればこそ、手入れやらで顔を合わせる機会の多い両の委員たちが、他の生徒の知らぬ間に仲良くなっていても不思議ではない。
孫兵は三木ヱ門が一平の行方に見当を付けていたことを知らないから、無防備に伊作の居場所を尋ねた。
そのおかげで、ぼんやりと筋道が見えた。
猿に関わることで生物委員は保健委員に、分けても保健委員長に用がある。それならば、必要とされているのは豊富で正確な薬草・毒草の知識だろう。
眠り薬か血清を頼むのかなと三木ヱ門は考えたが、薬の量は体重に左右されるとさっき左近が言っていた。
こと薬に関しては、適当にごまかして掠め取れるほど伊作は甘くない。理由も言わずにただ下さいと言っても渡してはくれないだろうし、孫次郎言うところの「最後は服をめくって回らなきゃなんない」ほどの小さな猿に、素人が当てずっぽうの分量で薬を使うのは危険過ぎる。
善法寺先輩もまたやんごとなき猿の存在を知っていて、何らかの形で――おそらくは専属御医の役で、生物委員会に協力していたと推測できないか?
猿が学園に来ることになった経緯の最後には、南蛮と本邦の貿易商がそれぞれ関わっている。手のかかる猿を預かる代わりになんぼかお駄賃もらえますかと、きり丸ならずとも言いたくなる所だ。
その駄賃に保健委員会も噛ませることで伊作の協力を取り付け、公にできる話ではないので伊作はその事を自分の胸ひとつに収め、結果、医務室の薬棚は充実した。
「と考えれば、話がつながって来るるる……あれ?」
ぶつぶつ呟きながら歩いているうち、いつの間にか食草園の前に差し掛かっている。この時期になっても青々とした草が丈高く伸びているその中に、紛れ込むようにしゃがんでいる青い制服が見えた。
「そこにいらっしゃるのは――はちやはちざえもん先輩」
そう呼び掛けられた八左ヱ門は、眠たげに閉じていた目を半分だけ開いてニヤリとした。




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